Weekly北朝鮮『労働新聞』 (22)

「経済政策貫徹」を担保する「異常気候」対策(2023年7月16日~7月22日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年7月24日
エリア: アジア
7月19日付紙面に掲載された、北朝鮮の電力関連施設(『労働新聞』HPより)
猛暑に見舞われている北朝鮮だが、エアコンの普及不足と電力不足で具体的な対策に乏しい。南「傀儡地域」の情勢を含む米韓への非難が続く一方、先週の2度のミサイル発射が報道されないことも気にかかる。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記の動静報道が減少しているなか、「災害性異常気候」についての記事が目立つ。例えば、7月19日付の1面下段には、「災害性異常気候に徹底して対処することは党組織の当面の任務」と題して、「わが党において人民一人一人の生命は何よりも大切で、人民が健在で健康でこそ党もあり国家もあり、この地のすべてのものがあります」との金正恩語録を伝えている。

 異常気象のなかでも特に強調される猛暑については、エアコンが広く普及していないことが背景にある。エアコンを設置していたとしても、頻繁な停電で十分な稼働は見込めない。公共の場所に設置される貴重なエアコンには、「金正恩同志が送ってくださった配慮設備」とのステッカーが貼られるほどである。記事では、異常気象への諸対策が「経済政策貫徹を確固として担保する」ことにも資すると主張する。……

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top