当局に摘発された本村哲也氏(51)の元同僚や他の金融機関の元トレーダーは、それぞれ過酷な境遇に直面していた。ある者は米国の陪審裁判で有罪評決が下され、禁錮刑が科された。またある者は母国オーストラリアで逮捕された後、米国に引き渡され、そこで有罪答弁をして収監された。本村氏と同じく、自国にとどまり、国際指名手配されている者も数人いた。
それが2017年、潮目が変わり始める。米国で禁錮刑を言い渡されていた本村氏の元同僚の英国人トレーダー2人が控訴した結果、2人とも有罪判決が取り消されたのだ。2人は英国でも捜査対象となり、その過程で証言を強制されていた。米連邦控訴裁は、そうした証言が米国の裁判でも使われたことについて、憲法修正第5条(法の適正な手続き規定)に反すると判断した。
英国内でLIBOR事件の「首謀者」とされていた、スイスの銀行大手UBSと米シティグループの各東京支店を渡り歩いた英国人元トレーダーのトム・ヘイズ氏も、英刑務所での11年に及ぶ刑期(LIBOR事件関連では最長)のちょうど半ばに差し掛かった2021年に釈放された。ヘイズ氏は米国でも起訴されていたが、2022年にその起訴も取り下げられた。
さらにドイツ銀行の米英2人の元トレーダーも同年、米国で有罪判決が取り消された。
DISMISSAL(起訴取り下げ)の知らせ
そして2023年7月27日、本村氏のもとに嬉しい知らせが届いた。
米国の代理人弁護士から麻布国際法律事務所の入江源太弁護士経由でメールで送られてきたのは、ニューヨーク南部地区連邦地裁に登録された文書のコピーだった。そこには「DISMISSAL」(起訴取り下げ)という単語が太字で書かれていた。共謀、電信詐欺いずれの訴因でも起訴が取り下げられた。
たまたま同日、本村氏のオフィスを訪れた筆者は……
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