ストックホルムのスウェーデン自然史博物館が所蔵するタスマニアタイガーの遺骸。3つの角度から撮影 (C)REUTERS/Emilio Marmol Sanchez
[ロイター] 縞模様のオオカミのような姿のタスマニアタイガー(別名フクロオオカミ)は、かつてオーストラリア大陸や周りの島々に広く分布していた動物で、カンガルーや他の動物を狩る頂点捕食者だった。次第に人間による乱獲で絶滅した。
だが、タスマニアタイガーが絶滅した後も研究は続けられてきた。そして9月19日に学術誌「Genome Research」に掲載された論文では、研究史上初めてタスマニアタイガーのRNA抽出に成功したと発表された。RNAはすべての生体細胞に存在する遺伝物質で、DNAと構造が似ている。1891年からストックホルムの博物館に保存されていたタスマニアタイガーの乾燥させた皮膚と筋肉からRNAを回収したという。
近年、古代の動植物からDNAの抽出に成功したとの報告は相次いでおり、200万年以上も前の生物から抽出されたこともある。一方で本研究は、DNAより安定性が低いRNAを絶滅した種から回収した初めての例となる。
今回の研究のメインポイントではないものの、古代のRNAを抽出し、配列を解読し、解析する技術は、絶滅した種を再生する他の取り組みを加速する可能性がある。古いウイルスからRNAを回収することも、過去のパンデミックの原因を解明するのに役立つかもしれない。
DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)は類似する生体分子で、いずれも細胞生物学の研究で基本となる分子でもある。
DNAは二本鎖の分子で生物の遺伝情報を含む一方、RNAは一本鎖の分子で、DNAの遺伝情報を転写・翻訳し実際に生命活動へと移す。RNAは、生物が生存に必要なさまざまなタンパク質を合成し、細胞代謝を調節する役割を果たす。……
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