[ジャカルタ発/ロイター]エイドリアンは去年の夏、インドネシアの自動車整備専門学校を卒業した。だが、卒業後、仕事に就くことができたのは数週間だけ。ジャカルタのダウンタウンの売店でフルーツジュースを売る仕事だった。
2月14日に行われる大統領選挙で初めて投票する19歳のエイドリアンは、インドネシアに進出している電気自動車メーカーでの職を求めているが、大統領候補たちの経済政策にはほとんど期待していない。「工場ができればいいと思う。そうなれば職場が増えるから」。インドネシアの慣例通りひとつの名前しか持たない彼はそう語る。
世論調査会社Populixの調べによると、2000年代生まれとZ世代の有権者は、インドネシアの2億500万の有権者の半分以上を占める。彼ら若い有権者にとって今回の選挙の最大の関心事は、雇用と生活の質の向上だ。
東南アジア最大の経済大国インドネシアは、独立100周年を祝う2045年までに高所得国の仲間入りを果たすことを目標に掲げている。そのためには、若者が十分な収入を得られる雇用を作り出すことは必須の課題だ。毎年300万人が労働市場に参入するこの国で、大統領候補たちは今後5年間で1500万の雇用を増やすことを約束している。
2期を満了して今年10月に退任するジョコ・“ジョコウィ”・ウィドド政権が推進してきた若者を熟練工に育てる政策に従って、多くの若者と同じようにエイドリアンは職業教育を選んだ。ジョコウィの政策は、豊かな天然資源に恵まれたインドネシアで、一次よりも二次、三次といった下流(ダウンストリーム)産業への投資を誘致するための補強となるはずだった。……
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