
たとえデモが沈静化しても、巨額の国家債務という問題は残っている[デモ隊と警察との衝突で死者が発生した後、記者会見を開いたルト大統領=2024年6月25日、ケニア・ナイロビ](C)REUTERS/Monicah Mwangi
[ナイロビ発/ロイター]華やかに世界を飛び回る大統領の姿とは対照的に、ケニアの人々は厳しい経済状況に耐えることを強いられている。庶民が物価上昇で苦しむ一方で、政府高官が地位を濫用して財を蓄えているのを目の当たりにし、ケニアの人々は何日も抗議活動を続け、6月末、ルト政権が提案した増税案が盛り込まれた2024年度の財政法案を撤回に追い込んだ。
このUターンは、ケニアだけでなくアフリカ大陸全体を代弁して世界を飛び回るルトのイメージと、借金と汚職と安全保障上の脅威に晒されるケニアの過酷な現実との間の深い溝を改めて露呈することになった。ルトの国内の足場は弱体化し、事態への対応をめぐって政権内は分裂している。一方、野党は勢いを増し、2027年の選挙に向けて人々の不満の波を取り込もうとしているとアナリストや政治家たちは言う。
「外国の支援を受けて、その利益の奴隷となり、自国の人々とその利益に心を砕いたこともない(ルト政権は)優先順位を誤った報いを受ける定めだったのだ」。ケニアの元最高裁長官ウィリー・ムトゥンガはロイターの取材にこう答えた。「若者の物質的要求に対処しない限り、社会の裂け目は大きくなっていくばかりだろう」。

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