Weekly北朝鮮『労働新聞』 (80)

壮大化する「地方発展20×10政策」、軍人頼みの経済建設続く(2024年8月25日~8月31日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年9月2日
タグ: 金正恩 北朝鮮
エリア: アジア
工場建設には軍人たちが動員されており、現地を訪れた金正恩国務委員長は軍の指揮官たちを直接指導した(『労働新聞』HPより)
近代的な地方産業工場を毎年20の郡で建設し、10年以内に全国全ての市、郡で完工するという「地方発展20×10政策」が、金正恩国務委員長の「重大措置」によりさらに壮大な計画となった。同時に、無人機や核魚雷といった新兵器の開発も推進しており、軍は経済建設と軍事力強化の両方を担う形となっている。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 8月26日付は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が24日、25日の両日、複数の地方工業工場建設現場を現地指導したことについて報じた。金正恩は、「今日のような困難な時期には下しがたい決心だ」としつつ、軍部隊に対して、地方工業工場の建設に先行して、「科学技術普及拠点」や病院、糧穀管理施設を完工するのが合理的だとの方針を示した。

 市、郡ごとに「科学技術普及センター」を設けることは、「農村力量の先進化、労働階級化、科学技術人材化」を早期に実現するための実践的方途だという。また、地方の医療施設が都市に比べて立ち遅れているとして、各地における大規模病院の建設が必須課題に掲げられた。さらに「糧穀管理所」という新しい概念が打ち出され、「苦労して収穫した穀粒を一粒も無駄なくしっかり保管、管理し、とりわけ人民に対して良質に加工された食糧を供給できるようにすべきだ」とされた。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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