ドナルド・トランプの「ポピュリストはやがて軍を殺す」
Foresight World Watcher's 5 Tips

今週もお疲れ様でした。高官の解任や辞任が続いた1期目のトランプ政権ですが、とりわけ懸念されたのが軍との関係性です。当初は“マイ・ジェネラルズ(私の将軍たち)”と呼ぶ高級将校で政権の要職を固めたものの、ジェームズ・マティス国防長官(元海兵隊大将)も、ハーバート・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官(陸軍中将=当時)も、ジョン・ケリー大統領首席補佐官(元海兵隊大将)も、トランプ氏との対立の後に政権を去りました。米軍制服組トップの統合参謀本部議長だったマーク・ミリー大将(当時)との関係に至っては、トランプ支持派の連邦議会議事堂襲撃を受けて中国側にコンタクトをとったとされることに、トランプ氏は「反逆罪で死刑に値する」と怒りのコメントを発しています。大統領選期間中も米軍の「「目覚めた(woke)」将軍たちを追放すると表明しており、第2次政権の政軍関係は重要な焦点でしょう。
これについて米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌に興味深い論考が載りました。曰く「(ポピュリストの)軍への熱愛はたいてい長続きしない。なぜなら、ポピュリストは自分たちの思いどおりにできない可能性のある強力な独立機関を許容できないからだ」。軍隊を崇拝することも、逆にその独立性と専門性を過剰に矮小化することも、ともに政軍関係を歪ませます。米軍の採用数は年間4万人の不足という状況にありますが、その背景にある米軍への世論の信頼低下に、実はトランプ陣営のポピュリズム志向も強い因果関係を持つのではないか。そうしたことを考えさせられる論考でした。
フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事5本、よろしければご一緒に。
Can America's Allies Save America's Alliances?【Robin Niblett/Foreign Affairs/1月8日付】
「米国の同盟国は、2016年の[ドナルド・]トランプの勝利をほとんど例外的なものと解釈しており、[ウラジーミル・]プーチン大統領によるウクライナ侵攻と、中国がモスクワと連携したこと以降、米国の同盟関係が強化されたことを、戦略的な正常化への回帰と捉えていた。しかし、トランプの再選はより長期的な影響をもたらす可能性がある」
「米国の同盟国は、結束を固めるか、あるいはトランプ大統領が引き起こすかもしれない離反の動きに身を任せるかの決断を迫られることになる。もし後者を選ぶのであれば、米国のリーダーシップが不在となるなかで、各国が狭い自己利益を追求することになるだろう。その場合、今後数十年にわたって国内および国際的な課題に対処することは困難となり、米国は地政学上のライバル諸国と比較して著しく弱体化することになるだろう」
1月20日に行われる米大統領就任式を前に、海外メディアには“トランプ2.0”についての予測や懸念、期待などが渦巻いている。
まず冒頭で引用したのは英王立国際問題研究所の特別研究員、ロビン・ニブレットが米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトに寄せた「アメリカの同盟諸国はアメリカの同盟を救えるか?」の一節だ。
ニブレットは、トランプ1期目の時点より大西洋・太平洋の両地域で安全保障環境が悪化し、これに対応するための防衛費の増額や周辺国との関係見直しなどによって各国の内政や地域外交が揺らいでいると指摘。にもかかわらず、次期大統領が米国第一主義を強めているため、欧州や東アジアの同盟国が対米を含む外交政策全般の関係の見直しにまで動き始めていることを紹介する。

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