
[北京発・ロイター]DeepSeekは昨年12月に発表した論文の中で、大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek-V3」の開発には米エヌビディア製のGPU「H800」を使用し、わずか600万ドル(約9億円)未満の費用しか必要としなかったと主張している。H800は中国向けのモデルであり、性能に制約がある。
このDeepSeek-V3を搭載した同社のAIアシスタントは、AppleのApp Storeで無料アプリランキングのトップに立ち、競合する「ChatGPT」を上回る人気を獲得している。これは、一部の米テクノロジー企業がAIへの投資として数十億ドルを費やす正当性に疑義を生じさせる事態だ。実際、エヌビディアを含む複数の大手テック企業の株価にも影響が出た。
なぜ注目を集めているのか
2022年末にOpenAIがChatGPTを公開したことを受けて、中国のテクノロジー企業はこぞってAIを活用したチャットボットの開発を急いだ。しかし、検索エンジン大手のバイドゥ(百度)が最初の中国版ChatGPTを発表した際、中国国内では、米中間のAI開発能力の格差に失望する声が広がった。
DeepSeekのモデルの品質と開発コスト効率の高さは、こうした見方を一変させた。昨年12月に登場したDeepSeek-V3と、今年1月20日に発表された「DeepSeek-R1」は、OpenAIやMetaの最先端モデルに引けをとらないとされている。シリコンバレーの幹部や米テック企業のエンジニアたちの間でも、この点を称賛する声は多い。
さらに、利用コストも安価である。DeepSeekの公式WeChatアカウントの投稿によれば、DeepSeek-R1は、タスクによってはOpenAIの「o1」モデルよりも20~50倍安価に利用できるという。
しかし、こうしたDeepSeekのサクセスストーリーには疑問もある。

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