America First? China for YOU!
Foresight World Watcher's 4 Tips

ドナルド・トランプ米大統領から「友好国、同盟国を100%守るため、米国の抑止力を提供して行く」との発言を引き出した日米首脳会談は、安全保障の面ではひとまず大きな成果を得ました。一方で懸念が拭えないのが経済問題。日本製鉄によるUSスチール買収の行方は、事実上、今後の日鉄‐トランプ大統領の直接交渉に持ち越されたと言えるでしょう。
国際社会への影響の広がりという点で特に注目しておきたいのが、トランプ氏が共同会見で2月10日か11日にも発表すると発言した「相互関税」の導入です。貿易相手国が米国に課すのと同水準の関税をかけるというこの報復的な措置は、米国の巨大な国内市場をテコに使って相手に圧力をかける形になりますが、同時にもう一つの巨大市場である中国を利する危険性も孕むでしょう。中国にとっては、米国に代わる“使い勝手のよい”経済パワーとして、貿易相手国を引き寄せる好機にもなりえるように思います。
この相互関税そのものに触れてはいませんが、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌サイトにスティムソンセンターのユン・スンが寄せた論考は、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」を逆手にとって「100年に1度の変革」を成功させようとする中国の動きを捉えています。
フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本、よろしければご一緒に。
China’s Trump Strategy【Yun Sun/Foreign Affairs/2月6日付】
「トランプ氏の最初の任期以来、中国は米国への対応を適応させており、ここ3カ月間でさらに戦略を発展させ、トランプ氏の不安定な政策運営による損害を予測し、対抗し、最小限に抑えるための準備を進めてきた。その結果、中国国内経済と外交関係を強化するための広範な取り組みが静かに進められている」
トランプ大統領が宣言したカナダとメキシコへの追加関税は1カ月延期されたが、対中国の追加関税だけは2月4日付で発動された。中国も10日から報復関税に踏み切る予定だ。貿易をめぐる米中の角逐が本格化するのは確実だが、これに対する中国側の戦略はすでに進められてきたと、米スティムソンセンターのシニアフェロー、ユン・スンはFA誌の「中国の対トランプ戦略」において指摘する。
内需の不振が続く一方、貿易黒字の3分の1を対米で稼いでいる中国にとって、米国相手の貿易戦争は分が悪い。昨秋から景気刺激策を立て続けに打ち出しているが、巨大な不良債権問題を抱え続けている限り、国内経済の根治は当面難しいところだろう。
だが、それでも中国の指導者たちは「自国が歴史的な運命として台頭し、米国を世界の覇権国の座から押しのけると確信している。そして、トランプ氏の政策が長期的には米国の国力を損ない、国際的な地位を低下させると考えている」とスンは言う。習近平中国国家主席の唱える「100年に1度の変革」は長期戦だ。それは米国がスーパーパワーとして君臨してきた国際秩序を、どう自国有利に作り替えるかの戦いでもある。

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