「今週のトランプ」ラウンドアップ (5)

トランプ大統領の発言とアクション(4月10日~4月17日):関税二国間協議で狙う中国包囲網、日米初回は「Big Progress!」と投稿

執筆者:安田佐和子 2025年4月18日
エリア: アジア 北米
「日本が最優先」は「交渉に応じる国を優遇する」とのメッセージだろう[トランプ大統領(右端)とホワイトハウスで会談する赤沢経財相(左から3人目)=2025年4月16日](C)内閣官房提供/時事
トランプ大統領と政権キーパーソンから飛び出した1週間分の発言を、ストリート・インサイツ代表取締役・安田佐和子氏がマーケットへの影響を中心に詳細解説。▼データで見るベトナム経由「迂回輸出」の状況証拠▼為替、防衛費拡大に加え「対中投資審査をめぐる連携」も重視?▼ベッセント財務長官の「国際経済関係の再構築プロセス」宣言▼「パウエルを任期終了前にレームダック化」論が再浮上?▼カリフォルニア州知事、相互関税の停止を求め提訴の思惑は?

「これは最後のチャンスだ! 青い薬を飲むか、赤い薬を飲むか?」――これは映画『マトリックス』の有名なセリフで、ご記憶の方も多いだろう。赤い薬を選べば、現実世界に引き戻され厳しい現実に直面し、青い薬を選べば、これまで通りの生活(映画では仮想世界)で安穏に暮らせる。トランプ政権は、今まさに「関税」という劇薬で、世界を試そうとしている。

 4月2日に米国が貿易黒字を計上する国や貿易額が低い国などに一律10%、その条件に当てはまらない貿易赤字や非関税障壁を抱える国には個別で関税率を課すことが発表された。日本には24%、中国には34%とされ、報復措置を講じた中国については、4月9日に125%に引き上げた。フェンタニル流入問題を理由にして、相互関税と同じくIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に課していた20%と合わせ、145%に設定されたことになる。

 一方で、日本を始め中国以外で個別の相互関税を課した国には、報復措置を見送り米国と交渉する姿勢を見せたとして、90日間の一時停止を決定。早速、4月9-10日にベトナムのホー・ドゥク・フォック副首相が米国を訪問し通商交渉を開始。日本も赤沢亮正経済財政・再生相が16日に米国を訪れ、二国間交渉の幕が上がった。

データで見るベトナム経由「迂回輸出」の状況証拠

 ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は130カ国が米国との交渉を求めていると説明するが、ベトナムと日本が選ばれた理由として、中国包囲網構築への野心が見え隠れする。

 ベトナムと言えば、かねて中国の迂回輸出先として名指されてきた。トランプ1期目の2018年7月に対中追加関税が発動されたが、これと歩調を合わせるように、ベトナムの対中輸入は同年から上昇。総輸入に占める割合は2017年の27.5%から、 2023年の34.0%へ拡大した

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安田佐和子(やすださわこ) ストリート・インサイツ代表取締役、経済アナリスト 世界各国の中銀政策およびマクロ経済担当の為替ライターの経験を経て、2005年からニューヨークに拠点を移し、金融・経済の最前線、ウォール街で取材活動に従事するかたわら、自身のブログ「My Big Apple NY」で現地ならではの情報も配信。2015年に帰国、三井物産戦略研究所にて北米経済担当の研究員、双日総合研究所で米国政治経済や経済安全保障などの上級主任/研究員を経て、株式会社ストリート・インサイツを設立。その他、トレーダムにて為替アンバサダー、計量サステナビリティ学機構にて第三者委員会委員、日本貴金属マーケット協会のフェローを務める。
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