トランプ流「茶番」「無鉄砲」の限界点
Foresight World Watcher's 4 Tips
22日のジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長によるジャクソンホール講演は、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ着手を示唆しました。ドナルド・トランプ大統領の精力的な利下げ要請が効果を上げたかは別として、キーポイントは雇用です。雇用の関連指標は安定しているにもかかわらず、その「下振れリスクの高まり」に言及したのはなぜなのか。
パウエル議長は「労働市場はバランスを保っているように見えるが、それは労働の供給と需要の両方が著しく鈍化した結果生じた、奇妙な種類のバランスである(While the labor market appears to be in balance, it is a curious kind of balance that results from a marked slowing in both the supply of and demand for workers)」と語っています。働き手が減ったために、企業が採用を減らしても失業率が上昇しないカラクリが見えるというのです。
働き手減少の大きな要因と考えられるのが移民の減少。第2次トランプ政権の移民規制強化が、ここに影を落としています。米国株式市場は利下げ示唆を好感し、ダウ工業株30種は過去最高値を更新しました。しかし、生産力の低下は長期的に、アメリカの成長性にもネガティブな影響を与えかねません。トランプ流の経済政策に対する懸念の声が消えることはなさそうです。ジャクソンホール会議の直前に掲載された論考ですが、米ピーターソン国際経済研究所のアダム・S・ポーゼン所長は「カナダ、日本、メキシコ、韓国、フィリピン」が特に大きなダメージを受けると記しています。
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The Pernicious Spectacle of Trump's Russia-Ukraine Diplomacy【Michael Kimmage/Foreign Affairs/雑誌版9・10月号、オンライン版8月19日付】
「トランプの無鉄砲な外交スタイルが絶対に通用しないというわけではない。[略]たとえば、大統領の現状無視の姿勢は、アルメニアとアゼルバイジャンの創造的な和平合意を促進するのに役立った。だが、多くの国々が交錯し、その一部が衝突しているウクライナでは、政治家としてのトランプの限界はあまりにも明白だ。彼の招集力は強大かもしれない――一時的に世界を引き寄せることはできる――が、問題解決力はそうではない」
アメリカ・カトリック大教授のマイケル・キンメイジは米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌に「トランプのロシア-ウクライナ外交という悪質な見せ物」(雑誌版9・10月号。オンライン公開は8月19日付)を寄稿。ウラジーミル・プーチンやヴォロディミル・ゼレンスキー、そして欧州各国首脳らと立て続けに会談・協議を行なったドナルド・トランプの姿勢に強い懸念を示した。
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