支持率の急回復に困惑
「このままズルズルといまの状態が続けば自民党は本当に無くなってしまう」
自民党の総裁選前倒しを巡る方向性が一向に定まらない中、関係者の一人は危機感を込めてこう語った。
自民党の総裁選挙管理委員会は8月27日、党内から要求が上がる総裁選前倒しについて協議し、賛成する議員の氏名を公表することを決めた。
前倒しには党所属の国会議員295人と47都道府県連代表の計342の過半数である172の賛成が必要だ。この決定に自民党内からは波紋が広がった。
「いまさら実名にしたところで流れは変わらない。前倒しして石破さんご本人も出馬すればいい」(自民党所属議員=反石破派)
「実名ということになると少し考えなければいけない。党内の動きを見極めることも必要になってくる」(自民党所属議員=様子見的立場)
8月8日に開かれた自民党両院議員総会で、森山裕幹事長ら執行部は総裁選前倒しの是非について選挙管理委員会に諮ることを決めた。この時の雰囲気は「出席者の7割程度は前倒しに賛成」(自民党関係者)だったが、あれから3週間を経て空気感はだいぶ変わってきた。
その大きな要因は、各報道機関が伝える石破茂内閣の支持率が急回復してきたことだ。先月“石破退陣”の号外を配布するなど石破内閣に冷ややかだった読売新聞の今月の世論調査(24日公表)によれば、支持率は17ポイント上昇して39%に達した。他のメディアも同様の傾向を見せている。
「石破さんを旧安倍派などが引きずり下ろそうとしているという“負の構図”のイメージを、有権者の多くが抱いているということだろう」(自民党関係者)
確かに7月20日の参院選挙で与党過半数割れに追い込まれた後、積極的に石破おろしに動いたのは旧安倍派だった。旧安倍派幹部で自民党を離党している世耕弘成衆院議員は、萩生田光一衆院議員、松野博一元官房長官、西村康稔元経済産業大臣ら旧安倍派幹部と会食した際に、石破茂首相について「選挙結果を見れば交代しなければいけない」との認識で一致したことを、出演したテレビ番組で明らかにした(7月29日)。また、西村元経産相も7月27日には自身のSNSでいち早く総裁選の前倒しを求めていた。
こうした素早い対応を旧安倍派が見せることで、「裏金で自民党の印象を毀損した旧安倍派が、自分たちの責任を棚に上げ石破おろしに躍起となっている」という印象を世論に与えたのは想像に難くない。
「(旧安倍派)幹部の不用意な言動が本当にネックとなっている。特に世耕議員は離党している立場。同席した幹部に聞いたら『ちょっと飯でも食おうと集まっただけ。世耕さんの言いぶりだと、何だか謀議を企てているように聞こえて迷惑だ』と困っていた」(旧安倍派議員)
若手・中堅の“反乱”に注目
現在の自民党を俯瞰すると、総裁選前倒しに関する意見は3つに集約される。
1つは従来通り、総裁選前倒しを求める意見だ。これは旧安倍派だけでなく茂木敏充前幹事長が率いてきた旧茂木派や麻生派などが中心となっている。
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