まさかの続投宣言
麻生太郎「今回の参院選挙はいわゆる与党47、野党78という形であって、まさに惨敗と言えるものであったことは明らかです」(9月3日・横浜)
自民党最高顧問で石破茂総理に距離を置く麻生太郎元総理は、自身が率いる自民党唯一の派閥・麻生派の夏季研修会の演壇に立っていた。グレーのスーツにチャコールグレーのネクタイというシックな装いで臨んだ麻生だが、その表情は一貫して硬かった。
研修会の前日、自民党は両院議員総会を開いて参院選の敗北についての総括をまとめた。党総裁として石破は「参院選の責任は自分にある」ことを認めたが、焦点である自らの進退については具体的に明示しなかった。
自民党総裁選の前倒しを求める署名の提出期限である9月8日が迫る中、麻生が前倒し支持を明言するかどうかに注目が集まった。
麻生「私自身につきましては、総裁選挙の前倒しを要求する書面に署名、そして提出をすると決めております」
多くの自民党議員は、この発言によって総裁選の号砲が鳴ったと受け止めたのではないか。
時計の針をさらに1日戻したい。9月2日の両院議員総会の開催前、石破が総会で身を引く時期について具体的に触れるとの見方も出ていた。関係者によれば、石破は直前の週末(8月30~31日)、親しい議員や民間人などに連絡を取り、総会で何を訴えれば良いか相談していたというのだ。
「ひょっとしたら、今すぐではなくても“日米関税交渉のメドが立てば身を引く”というような言い方をするかもしれない」(政界関係者)
しかし現実は違った。
石破「地位に恋々とするものでは全くありません。しがみつくつもりも全くありません。我が党が国家国民のために、誠心誠意、全力で取り向かって、立ち向かっていきたい」(2日・両院議員総会)
「恋々とするつもりはない」と強調した石破だが、いつ、どのような条件が成り立ったら辞める、ということには一切触れなかった。
「石破さんの挨拶は尻切れトンボだ。辞める気はないな、あの様子だと」(自民党関係者)
実際、石破は総会後に記者団の前で「まず国民がやってもらいたいと思っていることに全力を尽くす」と述べ、続投を宣言した。
飛び交う「解散」の噂
筆者も石破の挨拶を聞いて、辞任するつもりがないことを確認した議員の多くが、総裁選の前倒しに向けて動くだろうと直感した。
去年石破と総裁の椅子を争った高市早苗前経済安保担当大臣は、関係の近い議員らと会合を開いた。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。