トランプ大統領の発言とアクション(9月11日~19日):米中TikTok問題にちらつく中間選挙対策の「譲歩」
米中、TikTokの米国事業売却で合意
「米国の黄金時代が今から始まる」――ドナルド・トランプ氏は1月20日、大統領就任演説で高らかに宣言した。米国は2026年7月4日で建国250周年を迎える。有権者はその年11月3日が投票日の中間選挙で、黄金時代の到来を確約したトランプ政権に評価を下すことだろう。
中間選挙は、現職の大統領が敗北するケースが圧倒的に多いことで知られる。投票率が大統領選よりも低下するだけでなく、与党支持者の関心が薄れ、逆に野党の支持者が選挙に出向くインセンティブは高まるためだ。第二次世界大戦後、20回の中間選挙のうち、下院で改選前の議席数を上回ったのは、ビル・クリントン政権2期目の1998年と、ジョージ・W・ブッシュ政権1期目である2002年の2回のみ。20回平均で25議席を失っているが、バラク・オバマ政権1期目の2010年は金融危機の余波もあり、戦後最多となる63議席を失った。ただ、上院では与党は平均4議席を失っているものの、共和党政権では20回のうち5回議席を増やし、トランプ政権1期目も改選前を2議席上回った。
トランプ政権は中間選挙に向けて、てこ入れ策を2つ準備しつつある。1つは、「共和党全国大会」の開催だ。通常、党大会は大統領選の年に行われるが、トランプ氏は9月16日に、トゥルース・ソーシャル(TS)で「共和党は2024年の大統領選以降に成し遂げた偉大な成果を示すために、党大会を開催する」と投稿。開催日時や場所はまだ決まっていないものの、「非常に盛り上がるイベントになる」と予告した。
足元、トランプ氏率いる共和党は、上下院で過半数の議席を有する。しかし、下院の435議席のうちリードは6議席、上院の100議席のうち6議席程度と僅差だ。そのような状況下、民主党が党大会を検討中との報道が飛び込んできた。トランプ氏としては、減税恒久化を含む「ひとつの大きく美しい法(OBBBA)」の成果を誇示し、有権者の熱気を高め、勝利につなげたい考えだ。
もう1つは、ショート動画アプリのTikTokだ。2024年の大統領選において若手の支持層を獲得する上で、TikTokがトランプ陣営に大きな追い風を送ったことは明らかである。南カリフォルニア大学の分析によると、TikTokリサーチAPIと外部ツールを使って収集された大統領選関連の上位5種類のハッシュタグのうち、トランプ関連が4種類を占めた。TikTokが選挙戦において、いかにトランプ氏を宣伝する上で効果を発揮したかが窺える【チャート1】。
米国でのTikTok利用者数は、1億7000万人超と言われる。ピュー・リサーチ・センターによれば、ニュースの収集先として、TikTokはXやトゥルース・ソーシャルに続き、SNSのなかで3位に位置するだけでなく、割合も2020年の22%から52%へ急伸。トランプ政権が中間選挙での勝利を引き寄せる上で重要な資源となり、活用しない手はない【チャート2】。
「国家安全保障上の懸念」はどこに?
4回目の米中閣僚級貿易協議が9月14-15日にスペインのマドリードで行われ、TikTokの米国事業の売却へ向け枠組み合意が成立した。19日のトランプ氏と習近平中国国家主席による電話会談を経て、両国ともこれを承認する方向と伝えられる。
TikTokをめぐっては、2024年4月24日にジョー・バイデン大統領(当時)の署名をもって成立した「国家安全保障に関する緊急追加予算法案」で、米事業売却かサービス停止かの二択を迫る内容が盛り込まれた。これは、
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