もはや交渉相手の「翻意」は期待できない。国内の工業・農業事情が深刻さを増す中、金総書記は最後の闘争を仕掛けるが――。 十月五日、北朝鮮の金正日総書記は、中朝国交樹立六十周年を記念して訪朝した中国の温家宝首相との会談で「米朝協議の行方をみながら、六カ国協議を含む多国間の会談を行なう用意がある」と語った。 金総書記は九月に訪朝した中国の戴秉国国務委員との会談でも「二国間および多国間の対話を通じた問題解決」を表明している。六カ国協議に復帰する可能性を改めてちらつかせ米朝協議を実現させようとする今回の発言は、わずかな譲歩で大きな対価を獲得しようとする北の「サラミ外交」の典型であった。
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