「私の基本的な視座は、脳死移植問題を単に理論や知識レベルで対象化して考えるのでなく、たえずわが身に引き寄せて、『自分がその身になったらどうする?』という実感的・現実的なとらえ方をするところにあります」(柳田邦男『緊急発言 いのちへI』講談社刊 一五〇〇円) 本書は、ノンフィクション作家として活躍すると同時に、現代日本が直面する社会問題に対し、ジャーナリスティックな立場から精力的に発言を続けてきた著者の真摯な発言集である。 取り上げられているのは、脳死、メディア、少年事件、水俣病の四テーマ。新聞や雑誌等での発言を時系列順に並べた上で、その後の社会の反応、それに応じる著者の発言なども合わせてまとめてあるため、各問題の経過について全体像をつかむこともできる。

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