クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

フライパンから火の中へ

執筆者:徳岡孝夫 2001年3月号
エリア: アジア

 一月にフィリピンで政変があったとき、私は胸中「あ、またやってる」と、一種憐憫の情を覚えた。 数十万の群衆がマニラ街頭に出て、アロヨ副大統領と国軍参謀総長が先頭に立ち、みんなが笑顔で正義を行う満足感に浸っている。民衆の熱狂的支持を得て当選したはずのエストラダ大統領は、あれよあれよという間に「辞任」させられ、たちまちアロヨ新大統領の就任宣誓式。極貧から這い上がった男は捨てられ、コラソン・アキノそっくりな大金持ちのお嬢様が政権を握り、さすがアメリカの学校を出ただけに、お上手な英語で演説なさった。 フィリピンの憲法には「政権の交代は街頭において決する」と書いてあるのか? あれでも法治国家か?

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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