「アンコールにワーグナーのオペラ『トリスタンとイゾルデ』の前奏曲を用意しています。お聞きになりたいかどうかは、皆さんご自身で決めて下さい」 ユダヤ人指揮者バレンボイムがこう言った瞬間、ベルリン国立歌劇場の引っ越し公演に訪れたエルサレムの聴衆は騒然とした。ドイツ民族の優越性を謳いヒトラーを熱狂させたワーグナーのオペラは、建国以来タブーである。昨年、イスラエルの交響楽団が小編成の管弦楽曲を初めて演奏、オペラの一部もラジオ放送されたため、ワーグナーは贖罪を終えたと見る向きもあった。しかし、ドイツの楽団による演奏となると話は別だ。
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