クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

これが「洪水の前」だったのか

執筆者:徳岡孝夫 2001年12月号

 戦争を身をもって憶えているわれらの世代は、アフガニスタンから届く「新しい戦争」のニュースを、信じられない思いで読んでいる。 まずアメリカという国家が、ビン・ラディンやオマルといった少数の個人を相手に戦争するとは初耳である。戦争は国と国の争いであるのが常識。 次に、戦争をしながら相手国の人権を守るなど、聞いたことがない。日本が戦って敗れた戦争では、アメリカは人権のそもそもの持ち主である罪なき民を、狙って殺した。焼夷弾が降る、あの驟雨のような音を、どうして忘れることができよう。 家族が殺され家は焼かれ、一切合財を失った。アフガンでは敵側の民のために救援物資を投下し、それが民家に命中して人が死んだという。想像もできないことである。今と昔、同じアメリカ人の行為と思えない。

カテゴリ: カルチャー
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