ユダヤ教超正統派(上)世俗派との対立を強める「神を畏れる人々」

執筆者:立山良司 2002年8月号
エリア: 中東

 シャガールの絵には黒い上下を着て、山高帽をかぶったひげもじゃのユダヤ人男性がよく登場する。女性はロングスカートでスカーフをかぶっている。十九世紀末か二十世紀初頭のロシアだから、当時としては普通だったろう。ところが二十一世紀の今でも、同じような集団をエルサレムやニューヨークのマンハッタンでよく見る。超正統派(ウルトラ・オーソドックス)あるいはハレディームと呼ばれるユダヤ教の一グループだ。ハレディームはヘブライ語で「神を畏れる人々」を意味している。 現代のユダヤ教は大きく四つの流れに分かれる。正統派、保守派、改革派、それに超正統派だ。十八、十九世紀の欧州で、押し寄せる近代の波に対しユダヤ教徒の間では、伝統維持から積極変革まで四つの異なる反応があった。その差が四派の違いとなった。簡単にいえば正統派はトーラー(律法)をそのまま遵守しようとし、改革派は文字通り戒律に手を加えた。保守派はその中間だ。

カテゴリ: カルチャー
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