「モスクワ劇場占拠事件」の悪夢は終わらない

執筆者:松島芳彦 2002年12月号
エリア: ヨーロッパ

[モスクワ発]モスクワの地下にはスターリン時代に造られた無数の秘密の地下道が張り巡らされている。冷たい雨が降りしきる十月二十六日午前四時すぎ。ロシアが世界に誇る対テロ特殊部隊アルファとブインペルの精鋭がこの地下道を通り、チェチェン武装勢力が八百人以上の人質と立てこもるミュージカル劇場の下へと進んだ。 突入直前に客席後ろの通気口から、麻酔剤「フェンタニル」が主成分と後に発表された特殊ガスを注入。別の一隊も劇場の壁を爆破してなだれ込んだ。犯人や人質が異変に気づいた時は既に意識が薄れ、犯人は客席や自分に縛りつけたTNT火薬百二十キロ分の爆弾を爆発させる暇もなかった。

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