饗宴外交の舞台裏 (68)

ロシア大統領の訪英で供されたワイン

執筆者:西川恵 2003年9月号
エリア: ヨーロッパ

 イラクや北朝鮮のニュースの陰でほとんど注目されなかったが、六月末のプーチン・ロシア大統領の英国訪問は歴史的な意味合いを含んだイベントだった。 プーチン大統領は六月二十四日から二十七日まで国賓として英国を訪問した。英国がロシアの元首を国賓として受け入れたのは一八七四年のアレクサンドル二世以来で、実に百二十九年ぶりだった。 ロシア革命後の一九一八年、英王室の親戚にあたるロシア皇帝ニコライ二世と家族が処刑され、英国は以来、ソ連と外交慣例の国賓訪問を絶った。和解が成立したのはソ連崩壊後の九四年、エリツィン大統領のときで、エリザベス女王が初めて国賓として訪露した。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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