ウィズナー特使の正体

執筆者:春名幹男 2011年2月2日
エリア: 北米 中東

 オバマ米大統領がエジプトに派遣したフランク・G・ウィズナー特使(72)。日本のメディアは何も気付かなかったが、彼の父も国務省の外交官出身ながら、1950年代に米中央情報局(CIA)の秘密工作機関、政策調整部(OPC)の初代部長として活躍した有名な「荒業師」だった。中国共産党政権の打倒工作やスターリン暗殺なども計画したことがあった。

 なぜその息子が、米中東戦略の要、エジプトの危機に当たって特使を任ぜられたのか。彼がエジプト大使を務めたのは1986~91年の5年間。そのほか、ザンビア大使やフィリピン大使、インド大使なども務めているが、恐らくムバラク大統領の右腕でCIAとの密接な関係で知られるスレイマン副大統領(前総合情報局長官)に近いからではないか。エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長は米国との関係が良くない。オバマ政権は、親米政権の維持に苦慮している。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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