リビア情勢が新たな局面を迎えた。
今月の「インテリジェンス・ナウ」でも紹介したカダフィ政権のキーマンで元情報機関トップのムーサ・クーサ外相が30日英国に亡命、米政府は米中央情報局(CIA)工作員のリビア派遣を公表したのである。
2つの新事態は明らかに連関している。だが、戦局から見て必ずしも、カダフィ政権側が、決定的に不利な情勢に陥ったとは判断できない。当面十数人と推定されるCIA秘密工作員による反政府勢力テコ入れが成功するかどうかが重要なポイントだ。
クーサ外相は2003年、西側とリビアとの和解を演出した重要人物だが、元々名家の出身で、カダフィ一族と運命を共にするかどうか注目されていた。ミシガン州立大学出身で、CIAや英対外情報機関MI6と緊密な関係を築いた。今回のリビア危機では、米英情報機関から彼に対して相当の働きかけがあったが、最終的にはクーサ氏自身が身の危険を感じて出国したのではないか。チュニジアに出て、そこから航空機でファーンバラ空港に着いた。
他方、CIAの秘密工作は、カダフィ政権打倒に向けた大がかりな工作に違いない。既にリビアに潜入している英情報機関員とともに、反政府勢力に対する情報提供に加え、武器供給の秘密作戦を展開するに違いない。この情報はニューヨーク・タイムズが先に報じ、米政府当局が確認した。タイミングを計ったリークだろう。
北大西洋条約機構(NATO)の空爆「オデッセー・ドーン作戦」には当初から限界があり、劣勢の反政府勢力をどれほど支援できるかがカギだ。
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