バックマンの出馬表明とペイリンの今後の去就

執筆者:足立正彦 2011年6月21日
エリア: 北米

 今月13日、ニューハンプシャー州で行われた共和党大統領候補討論会に他の6候補とともに参加したミチェル・バックマン下院議員(ミネソタ州第6区選出)は、2012年共和党大統領候補指名獲得争いへの出馬に向け必要な書類を米連邦選挙委員会(FEC)に提出した事実を明らかにした。今年4月1日のコラムの中でも取り上げたが、支持基盤が近いバックマンの事実上の出馬表明はサラ・ペイリン前アラスカ州知事の今後の去就にも大きなインパクトを与えている。

 共和党大統領候補討論会でバックマンが共和党大統領候補指名獲得争いに出馬する意向を明らかにする一方、先月以降、ペイリン周辺の動きも慌ただしくなっていた。ペイリン夫妻はアリゾナ州スコッツデールに170万ドルの住居を購入したことが明らかになり、アラスカから米国本土に本拠地を移転して共和党大統領候補指名獲得争いや将来のアリゾナ州選出連邦上院議員選挙への出馬の布石ではないかとの憶測を呼んだ。先月末のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)休暇にはワシントンD.C.を起点として家族とともに北東部諸州をバスで巡る「ワン・ネイション・ツアー」を開始した。ヴァージニア州にある初代大統領ジョージ・ワシントンの邸宅マウント・ヴァーノンや南北戦争の激戦地ゲティスバーグ、建国の地フィラデルフィアのインデペンデンス・ホールや自由の鐘を訪れ、メディアの大きな注目を集めた。ニューヨークのマンハッタンでは、オバマの米国出生に疑問を呈し続け、不出馬表明をしたばかりの実業家ドナルド・トランプと夕食をともにした。また、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が州知事時代に署名したマサチューセッツ州の医療保険改革法についてボストンで批判し、ロムニーのニューハンプシャー州での正式出馬表明当日にはペイリンも同州入りしてメディアの注目をロムニーから奪うなど政治的な動きを見せていた。アイオワ、ネヴァダ、ニューハンプシャー、サウスカロライナの「序盤州」では、保守系フィルムメーカーのスティーブ・バノンが制作したアラスカ州知事在職中の業績にポジティブな視点から焦点を当てたフィルム「The Undefeated」の放映を今月から始めた。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top