「政治インテリジェンス」という言葉があるが、その概念はまだ定着してはいない。
第一次世界大戦末期、イギリス外務省に設置された「政治インテリジェンス部」は、敵・味方双方の政治・経済・軍事情報を分析した報告書を内閣に提出した、と言われる。
しかし、今ウォール街で注目されている政治インテリジェンスはこれとは少し異なる、国内の情報である。まだ決定していない金融改革法の詳細、例えば金融部門のどこがどんな規制を受けるか、といった情報をワシントンで入手し、ウォール街などの金融機関に提供する新手のコンサルタントが出現した、と伝えられている。
そうしたワシントン情報を入手するため、グリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長やスノー元財務長官ら大物を顧問に据える企業もある。ベテランのロビイストから政治情報を定期的に提供してもらい、報酬を支払うヘッジ・ファンドなどもある。
米国では、ロビイストは議会への登録を義務付けたロビイング公開法や司法省への届け出を規定している外国代理人登録法(FARA)がある。ただ、政治情報の提供だけだとこれらの法は適用されないようだ。
日本では今後、恐らく環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に伴う農業保護の施策などが最も注目されるだろう。日本にはロビイスト規制の法律はないから、余計にこの種のビジネスの関係者の顔が見えない。ただ、TPP関連情報は、官僚を通じた情報ルートですぐ漏れ出るのではないか。民主党がその「けものみち」を抑え、「政治主導」を発揮できるかどうか、見ものだ。
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