「オウンゴール」で窮地に追い込まれた馬英九

執筆者:野嶋剛 2011年11月24日
タグ: 中国 台湾
エリア: アジア
再選に黄信号が灯る馬英九総統 (C)AFP=時事
再選に黄信号が灯る馬英九総統 (C)AFP=時事

 馬英九が窮地に立たされている。  台湾大学、ハーバードで法律を学び、国民党独裁下で超エリートとして育てられ、順風満帆の政治家人生を歩んできた馬英九にとって、あるいは人生最大のピンチかも知れない。  過去、馬英九は選挙で1度も敗北を喫したことがない。イヤミなぐらい、いつも余裕で対立候補を倒してきた。  1998年の台北市長選で現職の民進党・陳水扁を7万票差で退け、2002年の同市長選でも民進党の李応元を30万票差で一蹴した。  国民党内の主導権を確立する選挙となった05年の党主席選挙では、ベテランの実力者、王金平をダブルスコア以上の大差で退けた。  そして、08年の総統選では過去最高得票率で民進党の謝長廷に圧勝。 「無敗神話」どころか「圧勝神話」である。  2012年1月14日に投開票される総統選挙は、馬英九の政治人生にとって恐らく最後の選挙となるだろう。台湾の総統は2期8年まで。その一点のシミなく輝く政治家人生の締めくくりとなる選挙まで2カ月を切ったいま、馬英九は民進党の女性候補、蔡英文に詰め寄られ、追いつかれ、追い抜かれたという見方さえ出ている。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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