存在の耐えられない軽さ(L'insoutenable légèreté de l'être)――。冷戦下、フランスに亡命したチェコ作家が30年近く前に発表した小説のタイトルを、つい思い出してしまう。北朝鮮が着々とミサイル発射実験を準備するなか、お隣の韓国・ソウルでは核サミットを舞台に米中露韓の間で活発に首脳会談が開かれた。 片や日本の野田佳彦首相は、自ら政治生命を賭けると宣言した消費税引き上げ法案をめぐる与党内審査に足元をすくわれた。かろうじてサミットには出席したものの、各国首脳とは立ち話をしただけで、北朝鮮を除く6カ国協議メンバーの首脳会談の輪の外にいた。外交も安全保障もあったものではない。民主党の目を覆わんばかりの醜態は、いかんなく日本という国家の溶融を示している。

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