饗宴外交の舞台裏 (170)

「原点回帰」を目指した米キャンプデービッドのG8

執筆者:西川恵 2012年7月10日
エリア: 北米
全員がノーネクタイで臨んだG8(右手前が野田首相)(c) AFP=時事
全員がノーネクタイで臨んだG8(右手前が野田首相)(c) AFP=時事

 最近、5月18、19の両日、米キャンプデービッド山荘でもたれた主要国首脳会議(G8サミット)の夕食会メニューを入手した。なかなかに興味深い内容である。  野田佳彦首相は18日午後、仁美夫人とともに特別機でワシントン郊外のダレス空港に着いた。そこから夫妻は別行動。首相はヘリコプターで110キロ離れた大統領山荘のキャンプデービッドへ、仁美夫人はワシントン市内のホテルへ入った。

何にも煩わされない環境を整備

 キャンプデービッドで各首脳は木々の中に散在するロッジを割り当てられた。小鳥のさえずりのほかは静寂が支配する。シェルパ(首脳個人代表)など少数の随員を除き、各国随行団はワシントンにとどめられた。多くのメディアもしかり。サミットの原点回帰を図るオバマ大統領は、首脳らが何にも煩わされず、率直に意見を交換できる環境を準備した。
 サミットはその夜のワーキングディナーで開幕した。各国首脳に、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員会委員長とファンロンパイ欧州理事会議長(EU大統領)を加えた10人が丸テーブルを囲んだ。全員ノーネクタイ。唯一、律儀にネクタイをつけて登場したオランド仏大統領も、その場でとった。

 チコリとタンポポとコーンのサラダ、ウズラのゆで卵、黒豚のベーコン、マッシュルームの酢漬けと共に
 ブレンハイム・ヴィニヤード “ペインテッド・ホワイト”10年(白)

 ピエモンテ種の牛肉、トーマス・ジェファーソン風野菜のフリカッセ、焼きニンニクと
 ブラック・アンクル・ヴィニヤード “スレート”レッド・ブレンド(赤)

 洋ナシのタルト、プラリネ・ソースで

 仕事の話をしながらの食事のため、前菜、主菜、デザートと、皿数は少ない。しかし練られたメニューである。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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