スポーツは国際情勢を反映し、国際政治はスポーツを通してそれぞれの国の有りようを鮮やかにあぶりだす。ロンドン五輪でも興味深い光景が幾つかあったが、女子柔道にまつわる2つのエピソードを紹介したい。 大会7日目の8月3日、エクセルで行なわれた女子柔道78キロ超級の試合。サウジアラビア代表、ウォジダン・シャハルハニ選手(16)がサウジ柔道連盟の男性2人に付き添われて登場すると、大きな拍手が湧いた。 頭には髪を覆う特製のヘジャブ。ヘジャブというと通常はイスラム教徒の女性が髪を隠すためにかぶる大きなスカーフだが、今回は競技でずれないように頭にピッタリとフィットする水泳帽のような形にした。 相手は米自治領プエルトリコのメリッサ・モヒカ選手。両者一礼すると組み合った。「頑張れ」とシャハルハニ選手に声援が飛んだが、1分22秒、モヒカ選手に投げられ一本をとられた。退場するシャハルハニ選手に温かい拍手が送られ、ジャーナリストたちはコメントをとろうと後を追った。
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