中東―危機の震源を読む (3)

イラクとシーア派をめぐる数知れぬ誤解と曲解

執筆者:池内恵 2005年3月号
エリア: 中東

 一月三十日のイラク国民議会選挙では、シーア派とクルド住民を中心に投票への広範な参加がみられた。選挙の敢行によって、イラク国家再建プロセスの成功が約束されたわけではなく、テロ攻撃が止むわけでもない。しかし、イラクの政府機関職員の上層から末端の労働者・求職者までを対象にした攻撃が、イラクの大多数の意思を体現したものではないことは示された。 いうまでもなく、今回の選挙で地歩を固めたのはシーア派諸勢力であり、選挙は彼らがイラク政治の主体としての存在を内外に鮮明にした瞬間であった。シーア派諸政党は選挙への動員力を示すことで、イラク国家再建プロセスの主導権を握った。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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