[ロンドン発]イギリスへのテロ攻撃は「避けられない」――過去に幾度も繰り返された警告だ。それでもやはり、実際にテロが起きると大きな衝撃だった。しかも、前夜には二〇一二年オリンピックのロンドン開催が決定し、人々は歓喜に溢れていた。その余韻もさめやらぬ朝の事件に、ロンドンは一転して恐怖と怒りと嘆きの街と化した。 考えてみれば、スコットランドで開催中のG8サミット(主要八カ国首脳会議)に合わせてテロが仕掛けられることは十分にあり得ることだった。しかし、事前にそれに思いを致した者はほとんどいなかった。 二〇〇一年九月十一日にアメリカで同時多発テロが起きて以来、アメリカと最も緊密な同盟国であるイギリスは常に次の標的だと言われてきた。しかし、何も起きなかった。次第に人々の緊張は緩んでいった。

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