80時間世界一周 (13)

フィリピンの反アロヨ・デモ家族総動員の理由

執筆者:竹田いさみ 2005年9月号
エリア: アジア

 朝目覚めて、ホテルの窓から目抜き通りを見下ろすと、不思議なことに見慣れた交通渋滞がなく、道路から車が消えている。フィリピンの首都マニラのビジネス地区マカティ。交通渋滞がないのは、アロヨ大統領に退陣を求めるデモ隊が大規模集会を行なうためだ。マニラ市が早朝から車両規制をかけて、反アロヨ陣営に首都圏を開放したのである。その数三万人。デモ隊を運ぶ貸し切りバスや小型バスのジプニーだけが、続々と集まってくる。 デモ隊に近寄ってみると、デモの性格がよくわかる。反アロヨ運動には、多数の団体がマニラ市内を中心に動員されており、それもフィリピンらしく家族単位での参加が多い。廃車寸前にしか見えない貸し切りバスの中を覗き込むと、幼稚園児から高齢者まで、デモ参加者の家族ですし詰め状態。集会の一時間以上も前から集まってくる。普段は交通渋滞を口実に、悪びれもせず待ち合わせに遅れてくるフィリピン人が多いのに、デモ参加は几帳面だ。いったい何故であろうか。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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