アメリカのジャーナリズムはどうなってしまったのだろうか。そう考え込まされるような出来事がこのところ相次いでいる。 核や生物・化学兵器の拡散問題に詳しいニューヨーク・タイムズの花形女性記者ジュディス・ミラーが、ブッシュ政権高官らによる対イラク開戦ムードづくりの世論操作に利用されていた疑いが強まり、十一月事実上の退職勧告を受けて辞職した。 ミラー記者は、ホワイトハウス高官(既に辞任)が中央情報局(CIA)女性工作員の名前を違法に外部に漏らしたとされる事件で、名前を耳打ちされた一人だった。捜査当局の取り調べに「ニュースの出元は絶対明かさない」という原則を収監されても守り抜き、ついこの間までは「報道の自由」を守ったヒロインとして持ち上げられていた。世は有為転変だ。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン