2025年まで北方領土を返さない?――ロシアが「長期開発計画」

執筆者:名越健郎 2014年5月12日
エリア: ヨーロッパ

 ウクライナ情勢緊迫に伴う西側の対露制裁で、日露間の北方領土交渉は後退してしまったが、気になる情報がモスクワから伝えられた。ロシア政府が2016-25年のクリール(千島)開発計画を実施することを決めたことだ。計画は10年にわたって北方領土でインフラ建設を進めるとしており、ロシアは少なくとも25年までは北方領土返還を想定していないことになる。

 

日本の新聞は報じず

 タス通信によれば、5月7日の国内開発をめぐる閣議で、プーチン大統領は政府が策定した極東開発計画に外国企業への税制優遇措置や極東住民への融資条件が書かれていないとし、「計画は遅々として進んでいない」と厳しく批判。その中で、「16年からのクリール諸島社会経済発展計画も用意されていない」と叱責した。大統領を恐れるガルシカ極東発展相は「16-25年のクリール発展計画を5月末までに政府で承認する」と釈明した。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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