ISIS に向き合う米国:オバマ演説と総合戦略

執筆者:武内宏樹 2014年9月21日
エリア: 中東 北米

 9月11日というのは米国社会にとってやはり特別な日である。今年も、全米各地の大学や研究所では9.11テロ後の国際政治をどう考えるかをめぐって様々なプログラムが企画され、活発な議論が行われた。筆者が所属するサザンメソジスト大学タワーセンター政治学研究所でも、9月11日に「アル・カイダ後の世界:米国総合戦略の将来展望」(After al Qaeda: The Future of American Grand Strategy)と題したシンポジウムが行われた。

 米国は2001年以来、テロにどう立ち向かうのかという課題に常に悩まされてきたが、今年になって「イラクとシリアのイスラム国」(Islamic State of Iraq and Syria: ISIS)が急速に台頭したことによって、「テロとの戦い」も新たな段階に入ったように筆者には感じられる。1989年から続いてきた「冷戦後世界」への楽観的な展望を吹き飛ばしたのが2001年に起こった9.11テロであったとすると、会田弘継氏が8月25日付の論考(「米国をイラクに引き戻した『史上最悪のテロ集団』」http://www.fsight.jp/28899)の中で「史上最悪のテロ集団」と形容しているISIS に米国が向き合わざるを得なくなったことは、今や「9.11後の世界」が「アル・カイダ後の世界」に入ったことを意味しているのではなかろうか。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
武内宏樹(たけうちひろき) サザンメソジスト大学(SMU)政治学部准教授、同大学タワーセンター政治学研究所サン・アンド・スター日本・東アジアプログラム部長。1973年生れ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)博士課程修了、博士(政治学)。UCLA 政治学部講師、スタンフォード大学公共政策プログラム講師を経て、2008年よりSMUアシスタント・プロフェッサーを務め、2014年より現職。著書に『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(共編著、慶應義塾大学出版会、2012年)、Tax Reform in Rural China: Revenue, Resistance, Authoritarian Rule (ケンブリッジ大学出版会、2014年)。ほかに、International Relations of the Asia-Pacific、Japanese Journal of Political Science、Journal of Chinese Political Science、Journal of Contemporary China、Journal of East Asian Studies、Modern Chinaなどに英語論文を掲載。専門は、中国政治、日本政治、東アジアの国際関係及び政治経済学。
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