9月11日というのは米国社会にとってやはり特別な日である。今年も、全米各地の大学や研究所では9.11テロ後の国際政治をどう考えるかをめぐって様々なプログラムが企画され、活発な議論が行われた。筆者が所属するサザンメソジスト大学タワーセンター政治学研究所でも、9月11日に「アル・カイダ後の世界:米国総合戦略の将来展望」(After al Qaeda: The Future of American Grand Strategy)と題したシンポジウムが行われた。
米国は2001年以来、テロにどう立ち向かうのかという課題に常に悩まされてきたが、今年になって「イラクとシリアのイスラム国」(Islamic State of Iraq and Syria: ISIS)が急速に台頭したことによって、「テロとの戦い」も新たな段階に入ったように筆者には感じられる。1989年から続いてきた「冷戦後世界」への楽観的な展望を吹き飛ばしたのが2001年に起こった9.11テロであったとすると、会田弘継氏が8月25日付の論考(「米国をイラクに引き戻した『史上最悪のテロ集団』」http://www.fsight.jp/28899)の中で「史上最悪のテロ集団」と形容しているISIS に米国が向き合わざるを得なくなったことは、今や「9.11後の世界」が「アル・カイダ後の世界」に入ったことを意味しているのではなかろうか。

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