ブックハンティング・クラシックス
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29歳の論客が示していた「ヨーロッパ統合」の道筋
『パン・ヨーロッパ』R. N. クーデンホーフ・カレルギー著/鹿島守之助訳鹿島研究所 1961年刊 第一次大戦の終結は欧州政治に晴天をもたらさなかった。一九一九年の対独ヴェルサイユ講和締結から二十年後には、早くも次の大戦が始まる。大戦が「第一次」になったのも、「第二次」が続発したからだ。英国の同時代史家E. H. カーは大戦間期を「危機の二十年」と呼んだ。が、それでもこの間、薄日ひとつ差さなかったわけではない。まず戦勝国による対敗戦国「強制の時期」、そのあと二四年には「協調の時期」が始まった、とカーは書く。「強制」が終わろうとした一九二三年春、旧オーストリア・ハンガリー帝国出身の一哲学・歴史学徒がウィーンで『パン・ヨーロッパ』なる著作を世に問い、評判を呼んだ。

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