政界には「潮目が変わる」という言葉がある。潮目とは、海面に線を引いたように見える、二つの異なる潮流がぶつかり合う境目を指す。政界に即して言えば、対立する両勢力がせめぎ合う攻防の最前線である。力の均衡が崩れ、戦線が一気に前進、後退する。そうした大きな局面転換の只中で、ある者は上気して、またある者は顔色をなくして口にするのがこの言葉だ。 夏の参議院選挙をにらんだ与野党攻防がヤマ場を迎えた五月下旬、まさしく潮目を変える出来事が起きた。いわゆる「消えた年金納付記録」問題である。民主党政策調査会長代理の長妻昭氏(衆議院比例東京、当選三回)が昨年六月以来、こつこつと追及を続けてきたこの問題がにわかに脚光を浴び、嵐のような政権批判を巻き起こしたのである。
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