ダラスの凶弾に斃れたジョン・F・ケネディが、生きてホワイトハウスに住んでいた頃の話。彼の死を悼んでケネディ国際空港と改称されたニューヨーク最大の飛行場は、アイドルワイルド空港と呼ばれていた。 サンフランシスコからの旅客機の座席でぐっすり眠り、スッチーのお姉さんに「もう着いてるわ」と肩を叩かれて目覚めた私は、寝呆けていたのか、空港内に両替所があったかどうか記憶にない。当座の旅費と小遣いは、ハワイ大学で五週間の準備教育中にフルブライト委員会からドルで貰っていた。 一ドル=三百六十円である。日本は高度成長も所得倍増も始まっていず、東京→ニューヨークの片道旅費が私の新聞記者の年収まるごと使っても足りないほどだった。「全額給費」だからこそ行けた米国留学である。

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