来日十七年、東京でレストランを開くスペイン人シェフのジョセップ・バラオナ・ビニェスさん(四二)に、本国の王室儀典長フランシスコ・ノンベラ氏から国際電話が入ったのは二〇〇八年の十月半ば。 「十一月にフアン・カルロス国王夫妻が国賓として訪日されるが、天皇皇后両陛下をお招きして開く答礼晩餐会の料理の指揮をとってもらえないか」 バラオナさんは「料理人として光栄この上ないことです」と、二つ返事で引き受けた。 国王夫妻は十一月九日に来日。十日に宮中晩餐会がもたれ、答礼晩餐会は翌十一日に明治記念館で開かれることになっていた。準備期間はわずか三週間。バラオナさんとスペイン王室の儀典部門との間でメールのやり取りが続いた。

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