中東―危機の震源を読む (50)

イスラエル「野心」に誤算 国際世論は味方せず

執筆者:池内恵 2009年2月号
エリア: 中東

 イスラエルのガザ・ハマース攻撃は、中東と国際政治に権力の空白が重なった時期に勃発した。イスラエルではオルメルト首相が昨年九月に辞任を表明しながら、新政権設立が進んでいない。オルメルトはそもそもシャロン元首相の代役だった。二〇〇五年に新党カディーマを設立したシャロンが〇六年一月に脳梗塞で倒れて職務遂行不能となったため、イスラエル政治では例外的に、職業軍人のキャリアを背景としないオルメルトが首相となった。しかし〇六年夏にレバノンのヒズブッラー(ヒズボラ)への軍事作戦の挫折で力を失い、汚職疑惑で責めたてられて辞任表明を余儀なくされた。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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