百年に一度の危機だ、いやそれ以上かもしれない、と大騒ぎである。百年というなら戦争で負けたときのほうがよほどの危機だったと思うが、少しばかり貧乏になるからといって、大騒ぎしてどうなるのか。頭を冷やして考えてみれば、悪いことばかりではない。うかつにも忘れかけていたことを、しかも大事なことを、この危機騒動は思い出させてくれた。 まずは国家とか企業とか、そういうものを頼りにしてはならないということを学ばなければならない。自分が生きるためには自分以外のものをとことん信用してはならないということである。まして「これは政治の無策だ」などと当たり前のことを叫んでみても得することは何もない。日本が好きだということと日本という国家を信用するということは、まったくの別問題である。

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