パイプライン建設を巡るロシアとEUの争いに、中国も参戦。域内諸国は、輸出先の多様化を歓迎しているが……。[モスクワ発]カスピ海沿岸のアゼルバイジャンやカザフスタンなどの中央アジア諸国は、豊富な天然資源を有することで知られる。これまでそれらの資源は、ほぼ「旧宗主国」ロシアを経由するルートで他国に輸出されてきた。しかし今年、東では中国向け直通パイプラインが完成し、西ではロシアの独占打破を狙う欧州連合(EU)の構想が動き出す。中央アジアの資源を巡る争奪戦が始まった――。 * 七月十三日、天然ガスをカスピ海沿岸からロシアを迂回して欧州へ運び出すEU主導の輸送計画「ナブッコ・パイプライン」の建設協定が結ばれた。着工は二〇一一年の予定だ。計画に参加するのは、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアの五カ国。EUのバローゾ欧州委員長も「エネルギー安全保障の強化に向けた最も重要な事業」と位置付ける。だが、欧州向けガス供給の独占を維持したいロシアの警戒感は強く、EUの思惑通りには進みそうもない。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン