【フォーサイトノンフィクション】 ブラック・ニッポン(上)

執筆者:出井康博 2000年3月号
タグ: 日本
エリア: アジア

 一九三〇年代、大恐慌後のデトロイトの街に一人の日本人が現れた。その名は中根中。貧困と差別に苦しむ黒人たちの「カリスマ的指導者」となった彼は、黒人を組織し、日本の味方に付けようと企んだ――。知られざる現代史に光をあてる。

 移民国家の米国にあって、「もう一つのアメリカ」と称される黒人社会。主流を占める白人社会とは異質な文化を維持してきた一方で、経済的にはヒスパニックやアジア系など後発の移民に追い抜かれ、貧困や犯罪といった問題に最も苦しんでいる。

 この黒人社会には、白人社会との関係を巡り今も二つの流れが存在する。マーチン・ルーサー・キング牧師に代表される、白人と協力して人種平等を目指す人種融合派と、かつてマルコムXが唱えたように、黒人だけの国を建設しようという人種隔離派である。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
出井康博(いでいやすひろ) 1965年、岡山県生れ。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『日経ウィークリー』記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)を経てフリーに。著書に、本サイト連載を大幅加筆した『ルポ ニッポン絶望工場」(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)など。最新刊は『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)
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