いまは道路ができ車が走るが、昔はチェンマイまで何かを買いに行こうと思えば、往復に丸六日かかった。そういう辺鄙な、北部タイのビルマ国境に近いある村の話が「バンコク・ポスト」(四月二十日)にあった。タイの英字紙だから、日本人読者を予想して書いた記事ではない。
昔、何千人もの日本の兵隊が、このクンユアム村を通って、密林の中の道をビルマに進軍していった。
何年か経って再び日本兵が、こんどはビルマから出てきた。疲れ、傷つき、病んだ者が多かった。元気な人は竹でイカダを組み、川を下っていった。途中に大きな滝があり、全員が死んだ。陸路を選んだ人々はチェンマイからバンコクへ、烈日の下を歩いていった。

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