国際論壇レビュー

ASEAN地域フォーラムに食われた沖縄サミット

執筆者:田中明彦 2000年8月号
エリア: アジア

 世界的にみると、G8サミットは日本においてほど注目を集める会議ではない。したがって、G8サミットの成果やテーマについて世界の論壇が注目しないのは、それほど異様なことではない。しかし、故小渕恵三前総理が、わざわざ沖縄で首脳会議を開くことにしたのは、それなりに世界の目をアジアに、そして沖縄に向けさせるという意図があってのことだろう。そうだとすると、沖縄で開催されたG8サミットが、あまり世界の関心を集めなかったことは、小渕前総理にしてみれば残念なことであったろう。 ただし、海外で全般的には大して関心が盛り上がらなかったなかで、世界のメディアがこのサミットに注目したのが、サミットに費やされた莫大な費用のわりに具体的成果がほとんどなかったということだった。『エコノミスト』誌は、社説で皮肉たっぷりに、「たくさん約束するが何も実現しない」と指摘している。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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