「択捉の帝王」の登場で歯舞・色丹返還も困難か

執筆者: 2000年9月号
エリア: ヨーロッパ アジア

 北方領土の択捉島に拠点を置くロシアの優良企業、「ギドロストロイ」が、色丹島に進出、色丹全島を勢力下に収めつつある。四島で最も貧しく、日本への返還論が支配的だった色丹の島内世論にも影響が及ぶ可能性が出てきた。 水産を中心に土木、金融業にも着手するギドロストロイは、ロシア極東の最優良企業といわれ、モスクワから来た謎のユダヤ人実業家、アレクサンドル・ベルホフスキー氏が択捉島の国営企業を買収して設立。欧米の技術、資本を積極的に導入するなど、発展を続けている。「択捉の帝王」と呼ばれるベルホフスキー社長は九九年七月、色丹島の缶詰め工場「オストロブノイ」を買収、同島に支店を置き、島の掌握に乗り出した。色丹は六年前の大地震で人口が二千人まで減少したが、旧ソ連時代は大型缶詰め工場があった。世界最大級の漁場だけに、開発次第で発展は可能だ。日本が人道援助した色丹の小型発電所も今後、企業活動に利用される恐れがある。

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