思い切ってやらせるにはリスクがある。さりとて、実際にやってみなければ利害得失は分らない――科学技術が抱える宿命的なテーマである。 子供を産みたいが、生まれないというカップルのために施す不妊治療にも、この宿命的なテーマが横たわっている。 ここ十数年、不妊治療を希望する患者は急増した。いまや全出産の一%、つまり百人に一人は不妊治療によるものとされている。 女性の生殖能力は二十代がピークで、年を経るにつれ低下していくが、女性の社会進出が盛んになり、出産期が遅れていることが最大の原因だ。現代社会のストレスが不妊の遠因になっていることもある。

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