饗宴外交の舞台裏 (160)

米中が「庶民食堂パフォーマンス」で散らした火花

執筆者:西川恵 2011年9月13日
エリア: 北米 アジア
北京で庶民的な食堂を訪れたバイデン米副大統領(c)AFP=時事
北京で庶民的な食堂を訪れたバイデン米副大統領(c)AFP=時事

 米国のバイデン副大統領が8月17日から6日間の日程で中国を訪問し、18日に人民大会堂で歓迎式典が行なわれた。

 習近平国家副主席が「あなたが国内問題で忙しいのはよく知っています。よくいらっしゃいました」と迎えると、「中国はすでに米国の国内問題ですよ」と副大統領は笑いながら返した。  バイデン副大統領の訪問の大きな目的は、来年、胡錦濤国家主席から党総書記の座を引き継ぐことが確実視されている習副主席と知り合い、関係を築くことだった。ただ同時に、訪中前に格下げされたばかりの米国債の問題で、「米国債で保有している資産の目減りにつながる」と懸念する中国に、米国債は安全であることを確約することも加わった。  副大統領は「中国は米国の国内問題」というウィットに包んで、相互依存関係の深さを述べたのだ。2人の初会談は友好的雰囲気で45分間行なわれた。会談後、バイデン副大統領はゲイリー・ロック駐中国米大使と共に車で北京中心部から少しはずれた鼓楼大街に向かった。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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