ジョブズの死と「アメリカの秋」
欧州ではユーロ危機がますます深刻化、ユーロ圏17カ国の南北対立の様相を強め、ギリシャはデフォルト(債務不履行)不可避との見方が続いている。米国の失業率は依然9%を超えたまま。9月半ばニューヨーク・ウォール街に始まった反格差デモは全米に、さらに世界に、広がり始めた。欧州が南北対立なら、アメリカでは民主・共和2大政党対立による政治麻痺で、オバマ政権は身動きがとれない。
そんな中で、IT企業アップルを一代で築きあげたカリスマ経営者スティーブ・ジョブズが、10月5日に亡くなった。56歳。ガレージで起業したアップルは一時、時価総額で世界最高となった。世界がジョブズの死を惜しんだのは、今日の世界が失った「夢」をジョブズの生き方に見たからか。ジョブズという稀代の起業家を生み出したのは、ウォール街で始まった反格差デモに通じる1960-70年代の反体制文化(カウンターカルチャー)だった。その死は、現代アメリカについての思索を促さずにはおかない。
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